Netflix韓国ドラマ ムーブ・トゥ・ヘブンをプロの遺品整理士が観てみた
目次
特殊清掃現場で防護服を着る理由。ドラマ都合の雨合羽では実際には危険
司会:今回はNetfrixオリジナルドラマの遺品整理を題材にした韓流ドラマ『ムーブ・トゥ・ヘブン』というドラマを実際にプロの遺品整理士が観たらどう感じるのか、どう思うのかっていうところを検証していきたいなと。
では実際観ていただいて、感想をさっそくお聞きできればと思ってます。
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社員:この人が多分作業員ですね。主人公になるのかな。おぉ、リアルですね、現場は。
代表:匂いはね、最初ちょっと衝撃的かもしれないですね。
司会:人によっては吐いちゃうんですか?
代表:覚悟してますよ。でもどうしても弱い人はいますからね。そういう人はもうできないよね。余計に汚しちゃうもんね。
社員:本当にそうですね(笑)
代表:防護服着てるねけど、雨合羽だよね、
社員:そうですね、カッパみたいですね、これ。
代表:防護服に雨合羽着てるんだ。たしかに現場の感じはすごく本物に近いけど。
社員:リアルですね
司会:防護服の着方とか気になるところとかありますか?
代表:そもそも防護服って亡くなった方がどういう病気で亡くなったかわからないから感染しないように着るわけですよね。で、この(ドラマの)場合は着ているんだけれどもマスクもしていないし手袋もしていなかったりするんで、
社員:そうですね、ただ羽織ってるだけみたいな。
代表:雨合羽みたいなのを着ちゃってるんでほとんど意味ないですよね。ただドラマ的にこれでオッケーなのかもしれないですけどね、雰囲気だけ出てれば。
社員:あぁ、かぶっちゃうと誰だかわからなくなっちゃうのか。
代表:まあ雨合羽はちょっとひどいね。
社員:そうですね。せめてマスクだとかはリアリティーほしい所かなと思いますね。
代表:顔を隠しちゃうからダメなんだろうね。
社員:そうですね。ただやっぱり作業する際は皮膚とかは極力隠すような感じで、マスクはもちろんあとは手袋も必要ですね。
代表:B型肝炎とかね、いろんな病気が隠れているんでね。
社員:はい、まあ今で言うとやっぱりコロナとかもありますよね。亡くなったばかりとか発見したばっかりだとまだ(菌やウィルスが)生きてる可能性があるので。
代表:遺族の人もわざわざ病気の事言わないと思うしね。
司会:やっぱりリアルな視点でいうとドラマの真似しちゃうと感染の危険性が高いということですね。
社員:高いですね。すごい高いです。
代表:まぁドラマ的にはこれでいいんでしょうね。でも少なくとも同業者が観るドラマではないよね。
司会:でも逆に現場がすごくリアルにできるってことはかなり調べてますよね。
社員:そうだと思いますよ。
代表:取材はしてると思いますよ。
作業をしたゴム手袋は交換必須。お客様に返す遺品を汚れたもので触るのは絶対にNG
司会: Netflixドラマって予算はあるんですね。すごいな。
代表:結構いい感じで再現されてますね。ただ血が垂れてたりとかそういう現場じゃなくて、虫の湧き具合とかがリアルですね。
社員:このシーン、汚れた箇所は撤去済みみたいなんですけど、ただ清掃したゴム手でそのまま家財も触るのはよくないですね。
代表:それは駄目ですね。お客様に返す品物をそのまま触っちゃってるので。
社員:うん、これはまずいですね。触らないにしても取り替えないと。スイッチに触っちゃうとか、ドアノブに触れたりとかもあるので清掃で使ったゴム手袋は捨てて交換ですね。
代表:あちこち触っちゃうからね。
社員:そうなんですよ、無意識で触っちゃうので。家財とか通帳とか触って見てるけどこれはちょっとまずいかなと思います。
司会:素人目線でもマスクしていないのは気になったんですよ。でもそういう手袋を交換してないとかあまり気にならなかったけどやっぱりプロの視点だとそういう気になることって出てきますね。
社員:そうですね、まあ手袋をしなくていい物件っていうのはほぼないと思っているので。
司会:劇中だと清掃作業から遺品整理までほぼ一人でやっているじゃないですか。1人でできます?
社員:これは体液がカーペットの裏まで染みていて固まっているってシーンだと思いますけど、このくらいであれば一人でできますよ。あとは家財の量とか、床をはがすっていうレベルになってくると難しいですけれども、今見たシーンの汚れた箇所だけの清掃だと一人でも十分かなと。
見積もり段階での消臭・消毒。遺品整理ふくろうでは完全無料で見積もり時にある程度行います
代表:だけどこういう依頼が来るときには大体臭いが相当ひどくて近所からクレームとかが来てウチが呼ばれる場合があるんですよ。そうなるとウチが行った時点でとにかく臭いを抑えなきゃいけない。だからウチの場合は応急処置的なものをして近所の方からクレームがつかないようにします。その場で一番汚れているところを先にとっちゃう。そうすれば結構な割合で現場が落ち着くので、そこまでやらなきゃダメってことですね。ただ行って見積もりして金額出して帰っていくっていうのはダメなんですよ。何かしてこないと。
司会:見積もりの段階でですか?
代表:その場で臭いを抑える。臭いの元があるといくら掃除しても臭いがどんどん出ちゃうんで元を取らなきゃダメなんですね、臭いをね。要は血液垂れてるとか腐敗がべたべたになってるところだとか、それをとっちゃうんです。行ったらそのままとっちゃうんです。
司会:では見積もりに行くときにある程度清掃道具とか持って行くんですか?
代表:持って行きますね。
社員:今だったらやっぱり消毒液、サービスで今やらせていただいているので私たちが見積もりする前に消毒液を散布してそこからお見積りを行っています。
代表:最初の消毒は作業依頼をもらっても、もらわなくても消毒はやっていくでしょ?
社員:はい。私たちもどうしても感染の恐れがあるので私たちの都合と、お客様のことも考えて消毒してそこからお見積り。作業をするしない問わず消毒はしています。
代表:まあせっかく呼んでくれたからね。
社員:やってダメってことはないと思うんで。もちろん家財にはかけられないので100パーセントはできないですけどね、表面上、手につきやすい場所は消毒はしていますね。
司会:もうそれは完全にサービスで見積もりで受注しないとしても散布だけはするんですか?
社員:そうですねサービスで。
故人を偲びながら片づける。だから故人の人物像が見えてくる
司会:今回のテーマは遺品整理の特殊清掃シーンをプロが観たらっていうことだったんですが、もう一個僕の方で気になったのは、遺品整理をしていく過程で主人公が亡くなった人がどんな人物だったのかをどんどんプロファイリングしていくんです、人物像をどんどん想像していくんですけど、実際に作業されていて故人の方の人物像っていうのを想像するっていうのは結構できるんですか?
代表:できるね。
社員:できますね。
代表:興味本位であらさがしするわけではなくて、やっぱり遺族の方に返すものを探すわけですので、これは要るのかな、これ要らないのかなっていうことで一応中を見るんです。そうすると中には給与明細が出てきたり、いろんな賞状が出てきたり。そうすると「あぁ、こういうことをされてた方なんだな」ということが、大体のことが掴めてくるんですね。通帳が出てくれば通帳も開けてみて、残金が残っているかどうか。印鑑がどこにあるのかって探すんですね。そういうことでいろんな部分で亡くなった方の人物像が浮かび上がってくるんですよね。でも日記とかね、もし自分が逆だったらあまり見られたくないものはなるべく見ないようにしてそのまま遺族の人に渡す。必要以上に深い所まで探さないようにはしていますけども、とりあえず返すもの、返さなくていいものを分けるために中は見ますので、こんな趣味があったのかとか、写真があればこんなとこに旅行に行ってるだとか、旅行の写真がいっぱいあれば趣味が旅行なのかなとかそういうことはわかってくるよね。
社員:そうですね、あとは細かいところでいうと、全然そんな気はないんですけれども片付けている最中に食生活とか分かりますね。こういうの好きなんだなとか、コーラをよく飲まれる方なんだなとか家でもわかっちゃうので。
代表:冷蔵庫の中がね、ジュースばっかりとかね。
社員:あとは冷凍食品ばっかりとか。そういうのは嫌でも目に入っちゃうんで。
代表:調味料を見ると手作りが好きなのかなとか。
社員:そうですね、フライパンが年季入ってたりとかコンロが汚れてたりとかすると料理をよくされてるのかなとか。プロファイリングっていうよりもわかっちゃうっていった方が正しいのかもしれないですね。
代表:そういうのを考えながら片付けすることって大事だと思うんですよね。本人の代わりに片づけているので、そういう思いを持ちながら片付けさせてもらう。これは大事なことですよ。ただバンバンバンバン捨てるんじゃなくてね。
社員:そうですね。
代表:これは大事にしていたものなのかなとか、これだけなんか引き出しに特別にしまってあるとかね。そしたら大事に扱わなきゃいけないから。
司会:じゃあ片付けながら故人の方を偲びながらっていう雰囲気にやっぱりなるんですね。
代表:そうそう。
社員:なりますね。
代表:前ね、おじいちゃんの家を片付けてて引き出しの中に孫の写真とお年玉袋が入っていた。これ今年のお正月にあげようと思ってとっておいたんじゃないかななんてね、ジーンとしちゃいますよね、そういうのがあると。
司会:なるほど、いいエピソードが聞けてよかったです。じゃあ今回は『ムーブ・トゥ・ヘブン』の遺品整理シーンを遺品整理士が観たらということでしたが最後はかなりハートウォーミングな話になりました。
代表・社員:ありがとうございました。
この記事の監修者
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自らお見積り、遺品整理、特殊清掃、不動産調査を担当。現場を肌で感じお客様の要望を常に意識している。「誠意」と「技術」を信条とし、ご遺族様に心から寄り添い、真心の遺品整理や生前整理を日々行う。
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