遺品整理は誰が行うべき?相続トラブルを防ぐためのポイントを徹底解説

遺品整理は誰が行うべきか、という疑問に対する答えは「遺品整理は相続人が行うべき」となります。相続人が複数の場合は全員で行うのが正解。また相続人について知っておきたい知識をご紹介しますので参考にしていただければと思います。遺品整理をする際の注意点も挙げておきます。遺品整理をして相続放棄ができなくなることや、業者に委託する時は事前に「遺品整理の意思決定書」を作成するという知識もお知らせしています。

遺品整理をする人は誰?

遺品整理を行うのは家族や親族が一般的

あたりまえのことですが、人が亡くなると物が残されます。物は自分で自分を始末してくれないので、誰かが処分することになります。一般的には残された家族や親戚が遺品を整理することになります。家族が同居していた場合は整理整頓や廃棄処分なども比較的簡単ですが、故人が長期間にわたる一人暮らしをしていたような場合はいろいろ問題が出てきます。まず保管しておきたい貴重品がなかなか見つかりません。

【遺品のなかで遺族が取り急ぎ保管したい物】

・現金 ・預貯金の通帳
・キャッシュカード ・クレジットカード
・印鑑 ・身分証明書(運転免許証・パスポートなど)
・重要書類(土地建物権利証など) ・その他(鍵、パソコンのパスワードなど)

但しこれらの遺品は被相続人(亡くなった人)から相続人(相続を受ける人)が受け取るものですから、相続人以外が勝手に使ってはいけません。検索して発見したら厳重に保管するようにしましょう。貴金属などの価値ある物を売却したり、日用品や家財道具を処分したりすることも許されません。家族が亡くなると行政への届出、通夜、葬儀、火葬などで忙しさに追われることになります。遺品整理はある程度落ち着いてから行うのがよいでしょう。では身辺が落ち着いてきて遺品整理をはじめるとしたら誰が指揮を執るべきでしょうか。一般的には、親が亡くなれば子が、子がいなければ親類縁者が行うことになります。

遺品整理をするのは相続人であるべき

遺品整理は一般的に家族や親戚が行うと述べましたが、更に正確に言うと、遺品整理は相続人が行うべき行為です。法的な観点から見ると、遺品は相続人の相続財産となります。例えば古い家具や使用済みの日用品でも他人が独断で処分することはできません。相続人が一人であれば話は簡単ですが、複数の相続人が存在する場合は何をするにも念入りな打ち合わせが必要です。

【相続人とは】

相続人とは被相続人が遺した相続財産を受け継ぐ人を指します。相続人の範囲は民法で次のように定められています。死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、以下の順序で配偶者と一緒に相続人になります。ただし相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。また内縁関係の人は相続人に含まれません。

(第1順位)死亡した人の子ども
ただしその子どもがすでに死亡している時は、その子どもの直系卑属(子どもや孫など)が相続人となります。子どもや孫がいる場合は、死亡した人に近い世代の子どもを優先します。

(第2順位)死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
父母も祖父母も健在の場合は死亡した人に近い世代である父母を優先します。第2順位の人は第1順位の人がいない場合に相続人になります。

(第3順位)死亡した人の兄弟姉妹
兄弟姉妹がすでに死亡している時は、その人の子どもが相続人となります。第3順位の人は第1順位の人も第2順位の人もいない時に相続人になります。

【法定相続分】

法定相続分は民法の規定により下記の通り定められています。ただし子ども、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いる時は、原則として均等に分けます。また法定相続分は「相続人の間で遺産分割の合意ができなかった場合の遺産の持ち主」であり、必ずしもこの相続分で遺産の分割をしなくてはならないわけではありません。

(配偶者と子どもが相続人の場合)
配偶者2分の1 子ども(2人以上の時は全員で)2分の1

(配偶者と直系尊属が相続人の場合)
配偶者3分の2 直系尊属(2人以上の時は全員で)3分の1

(配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合)
配偶者4分の3 兄弟姉妹(2人以上の時は全員で)4分の1

財産や不動産の相続に比べれば遺品整理は地味な作業に見えますが、遺品のなかには重要な物や価値のある物が隠れています。例えば不動産の登記済権利証や売買契約書が見つからなければ土地や建物に関する手続きができません。ですから相続人は遺品整理で責任を持って検索しなくてはなりません。

家族や親族以外に依頼することも可能

遺品整理の現場が自己所有の一戸建てであれば時間的な余裕がありますが、賃貸物件の集合住宅などの場合は、遺品整理を急がなくてはなりません。相続人が遺品整理をしようと思っても地理的な問題や時間的制約で思うように進められない可能性があります。また故人と近い関係だった場合は思い出の品を捨てることに戸惑いや罪悪感を覚えてしまい、気持ちが落ち込んでしまうようなこともあります。そのような場合は無理に自分だけで頑張らず、専門家に依頼するという方法もあります。

遺品整理をする際に注意したいこと

相続人が遺品整理を行う際に注意すること

①優先順位をつけて検索する
遺品整理の現場で注意したいことの筆頭は、優先順位をつけて検索に努めるということです。まず見つけたいのは故人の遺志を確認する上で重要な意味を持つ遺言状やエンディングノートです。これは故人から遺族へのメッセージという意味合いもあるので確保しておきましょう。

②遺言書は開封しない
発見した遺言書はたとえ相続人でも勝手に開けて読んではいけません。正式な遺言書は封印してあり、家庭裁判所で開封するまで厳重に保管しなければなりません。

③遺品整理にかかわることで相続放棄ができなくなる可能性がある
相続人は被相続人の遺産を相続するかしないか選択できます。相続しないことを相続放棄と呼び、こちらを選択するとプラスの遺産(現金・預貯金・貴金属・不動産など)もマイナスの遺産(借金・ローンなど)もすべて相続しないことになります。プラスとマイナスを差し引きして相続するかしないかを決めることができるのです。ただし相続放棄を宣言する前後に遺品整理をしてしまうと民法921条「単純承認」に該当する可能性があります。簡単ですので条文を見てみましょう。「第九百二十条 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する」というものです。遺品整理の作業が単純承認と見なされた場合は相続を放棄することができなくなるのでこの点には注意しましょう。

遺族や親族の同意を得ることが大切

遺品整理を実行する際に大切なことは、相続人が強力なリーダーシップを発揮することですが、同時に家族や親族とよく話し合い、円滑に作業を進めることです。故人の部屋にある物品にはいくつもの行先があります。形見分けする物、売却できる物、保存するもの、廃棄物(可燃物、不燃物、資源ゴミ、粗大ゴミ)など。これらは相続人の独断ではなく遺族や親族の同意を得ながら丁寧な作業を進めることが重要です。

遺品整理では事前に書面(遺品整理の意思決定書)を交わすこと

遺品整理を相続人以外が行うには大きく2つの方法があります。いずれも相続人の立ち会いまたは監督のもとで行うことになります。1つは親類縁者による作業、もう1つは専門業者に委託する作業です。親類縁者による作業はボランティアのようなものが多いので問題ありませんが、専門業者に委託する作業はきちんと書面を交わすようにしましょう。「遺品整理の意思決定書」という書面に明記されるべき内容は次のようなものです。

①依頼者と業者の責任範囲が明確に記載されている
②取り決め事項が公平である
③作業完了日が記載されている
④作業内容と見積りが明記されている
⑤アフターケアが保証されている

遺品整理を専門業者に依頼する際の注意点

遺品整理業者の選定には注意が必要

自分たちで遺品整理を行わない場合、何より良心的な業者を選択することが非常に重要です。以下の項目を参考に優良業者を探しましょう。

【良心的な業者を見分ける方法】
・必ず数社から見積りを取ること
・遺品整理士の資格者が在籍しているか確認すること
・ホームページやパンフレットに料金表が明記されているか
・現地を見て無料見積りをしてくれるか
・関連サービスのメリットがあるか(買取り、清掃、供養など)
・スタッフの対応がていねいで親切か
・営業エリアが地域密着で良心的か
・見積りどおりの明朗会計か

業者によっては買取りや不用品処分もしてくれる

遺品整理は単に物を片付けてくれるだけではありません。良心的な業者であれば価値のある物を買い取ってくれたり、不用品を適正に処分してくれたり、付随するサービスが充実しています。また重くて大きな家具や家電製品も円滑に搬出してくれます。そのようなワンストップでいろいろ依頼できる業者に依頼できると便利です。

まとめ

遺品整理は家族や親戚が行うのが一般的になっていますが、本来であれば相続人が行うべきことです。相続人が複数存在する時は全員参加で行うべきです。なぜなら相続人は最終的に被相続人の権利・義務・財産等を継承する立場にあるからです。私たち遺品整理ふくろうのような専門業者に依頼する時も、相続人の立ち会いや指揮監督があれば理想的です。なお遺品整理を行うことにより相続放棄ができなくなるなどの専門的な知識も必要です。遺品整理を業者に委託する際は信頼と実績のある良心的な専門家を選ぶようにしましょう。

この記事の監修者

彦田純一
彦田純一株式会社ふくろう 相続手続き全般、不動産調査担当
保有資格:行政書士、宅地建物取引士、空き家相談士、 競売不動産取扱主任者
実績:遺品整理業界20年 通算1万件以上の遺品整理、特殊清掃を行う。

遺品整理ふくろうにて相続手続きや不動産の売却など担当。株式会社イマジンライフの代表取締役であり、行政書士、宅地建物取引士等、複数の資格を保有する不動産のプロフェッショナル。昨今、増え続ける遺品整理時の相続問題や空き家問題に貢献するべく遺品整理ふくろうに2021年よりジョイン。
その他、来日外国人のビザ・在留資格をサポートなど幅広い業務に従事している。

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