遺品整理と生前整理の違いと生前整理のメリットについて解説

超高齢社会となった日本では遺品整理や生前整理がクローズアップされています。しかし専門家の立場からその詳細を聞く機会はあまりありません。遺品整理と生前整理では何がどう違うのか。そのメリットは何なのか。そして遺品整理と生前整理における具体的な作業はどういうものなのか。死が身近な存在になったとも言える高齢社会を舞台に、遺品整理と生前整理の実際を比較検討しながら、それぞれの価値観の集約点を探してみました。

遺品整理と生前整理の違い

日本が高齢社会になったせいか遺品整理という言葉がよく聞こえるようになりました。65歳以上の高齢者が人口の14%を超えると高齢社会と呼ばれますが、わが国は2021年の段階で高齢化率が29%を超えているので「超」のつく高齢社会と言えます。それだけ死というものが身近になった社会なのかもしれません。そのせいか最近は遺品整理だけでなく生前整理も注目されるようになりました。遺品整理と生前整理の違いをごく簡単に言うと、遺品整理は「亡くなった人の持ち物を片付けること」で、生前整理は「生きているうちに自分で持ち物を片付けること」ということになります。すなわち遺品整理は亡くなった人の家族や親族が手掛け、生前整理は終活の一環として自分が行います。いずれも不要な物を処分するということでは同じですが、遺品整理と生前整理では作業上、それぞれ独自の特徴が見られます。

遺品整理の特徴

遺品整理は亡くなった人が遺した物を整理、分配、処分する作業です。一般的には家族や親族が行いますが、残された物品の量が大量であったり、多忙で作業時間が取れなかったりする場合は、遺品整理の専門業者に依頼することも視野に入れるとよいでしょう。遺品整理では不用品だけでなく、重要書類、遺言書、現金、預金通帳、クレジットカード、宝石、高級アクセサリー、写真、思い出の品などをピックアップして仕分けします。経験と実績の豊かな遺品整理専門業者は的確な作業をスピーディに行うので便利です。

生前整理の特徴

生前整理は生きている人が自分の持ち物を整理、分配、処分する作業です。生前整理は一般的に本人が行いますが、病気や高齢などの事情によっては家族、親類、友人などが替わりに行うことがあります。誰が担当するかにかかわらず、本人が生きているうちに、その意志を尊重して片付けを全うしようという強い意志がはたらいています。そして生前整理では自分の所有物の行方を自分で決めることができるという特徴があります。自分の寿命が尽きた時、なるべく遺族に負担を掛けないように生前整理に取り組む人が増えています。

生前整理のメリット

では生前整理を行うことのメリットは何があるか考えてみましょう。その前に前置きしておきたいのですが、ものごとにはメリットもあればデメリットもあるのが世の常です。しかし生前整理に限ってはメリットの印象が強く、デメリットはあまり思い浮かびません。しいてデメリットを挙げるとすれば、実際に生前整理を手掛ける本人の時間や労力の負担があるということ、それから不用品の処分などで費用が掛かる場合があることくらいです。その点、生前整理のメリットにはインパクトがあります。

メリット(1)遺族が遺品整理に掛ける負担を軽減できる

あらかじめ生前整理をしておくと、遺族や相続人が遺品整理に掛ける労力を減らすことができます。そして遺品整理の段階で本人の遺志が明確にされていることが多いので形見分けなども円滑に進められます。

メリット(2)死後の相続トラブルを回避できる

生前整理で自分の財産目録を作成し、法的に有効な遺言書を用意しておけば、死後に遺族間で相続トラブルが起きることを防ぐことができます。相続にまつわるトラブルは遺族間の深刻な争いにつながりがちで、家庭崩壊の要因になることがあります。財産が多かれ少なかれ、正確な財産目録を作成し、遺言書とともに保管しておけば、死後の無用な相続トラブルを避けることができます。なお相続について管轄するのは家庭裁判所ですが、相続トラブルの相談件数は年々増えてきているといいます。そのなかでも総資産1,000万円以下の事例が目立つようになってきているとのことです。すなわち相続トラブルは金持ちや資産家だけのものではなく、私たちの身近なものになってきているということです。

メリット(3)身辺整理ができて生活環境が変わる

生前整理をするメリットは日々の暮らしのなかにも見つかります。元気なうちに身辺を整理しておけば快適に過ごせますし、万一の時にも後顧に憂いがありません。生前整理は自分にとって本当に必要な物と不要な物を見つめ直す良いきっかけになると思います。もうかなり以前になりますが「断捨離」というムーブメントがありました。物を断つ、捨てる、離れることによって生活を一新する運動でした。それは生前整理に通じるものがあります。整理整頓された物の少ない空間は気持ちよく充実した日々を創造してくれるに違いありません。せまく感じていた部屋もきっと広くなるでしょう。生前整理を行えば生きているうちに価値を実感できるはずです。

生前整理で行うこと

(1)財産目録を作成する

高齢になればなるほど自分の財産がいくらあるか正確に把握していないものです。タンス預金や銀行預金であればすぐに金額を確認することができますが、宝石や美術品などは専門家に査定してもらわないと価値がわかりません。さらに生前整理ではプラスの財産だけでなく、借金やローンといったマイナスの財産や隠れた負債も明らかになることがあります。これらをまとめると財産目録が作成できるようになります。本人の死後に家族や親族が財産目録を作ると数字や事情がわからないため非常に苦労します。本人が手掛ける生前整理だからこそ、正確な財産目録が作成できるのです。そして財産というのは年月とともに変動していくものです。現金は使えば減りますし、収入があれば増えます。もしも株式を保有していれば利益が出たり損失が出たりします。すなわち財産目録も定期的に更新しないと正確な数字を把握できないということになります。ですから生前整理をもとにした財産目録の作成は1回で終わらせるものではなく、生きている限り繰り返すものだと理解しましょう。大変かもしれませんが、それだけ価値がある作業なのです。

(2)遺言書またはエンディングノートを書く

資産家であっても、そうでなくても、逝去にあたり後顧に憂いを残さないためには遺言を残すことが肝要です。遺言は法令に則って遺言書として保管します。また遺言書ほど厳格なものではありませんが最近はエンディングノートを書くケースも増えています。遺言書は法律に基づいた文書なので、本人の死後の財産配分や詳細な取り決めを具体的に家族や親族または相続人に示すことができます。遺言書の法的拘束力は絶対的なものです。その一方でエンディングノートは単なる文書で、法的な拘束力はありません。気軽といえば気軽に書ける任意の文書です。遺言書とエンディングノートの両方を書いている人もいますが、その場合も特に問題はありません。遺言書には法的拘束力があるため記載事項に限りがあります。たとえば家族に対する感謝の気持ちや遺品の取り扱いなど手紙のような内容はエンディングノートに書くほうが自然です。

(3)不用品を処分する

家族や親族が本人の死後に遺品整理をする立場になった場合、いちばん困るのが不用品の存在です。特にサイズが大きな物、重い物、そして物量が多いケースでは処分に困ることになります。できれば本人が存命中に身辺の物品、特に不用品になると思われる物をきちんと仕分けし、積極的に処分を進めるようにするとよいでしょう。とは言いながら人の心というのは世話が焼けるもので、好きな物や思い出の品を処分することに二の足を踏みがちです。また「いつか使うだろう」と思って大事に仕舞い込んでしまう物もあることでしょう。こうした不用品は本人が亡くなった後で家族や親類が持て余します。不用品は毎週あるいは毎月、少しずつでも処分していくことをおすすめします。価値があるかないかは別にして、処分する決心がつかない物は家族や親族にとっても重荷になります。本人の死後、どの物品をどのように扱ってほしいか、こういうこともエンディングノートに書いておくと判断材料になります。しかし不用品の処分はなるべく生前整理で済ませることをおすすめします。

まとめ

遺品整理と生前整理の違いを取り上げ、双方の特徴や、メリットとデメリットを考察してきました。「亡くなった人の持ち物を整理する遺品整理」と「生きているうちに自分の持ち物を片付ける生前整理」ではそれぞれ作業に特徴があります。ここでは財産目録の作成、遺言書とエンディングノート、不用品処分などについて主に生前整理の視点からご紹介しました。考えるより、まず実行です。ぜひ生前整理に挑戦してみましょう。

この記事の監修者

山本 真一郎
山本 真一郎株式会社ふくろう 代表取締役
自らお見積り、遺品整理、特殊清掃、不動産調査を担当。現場を肌で感じお客様の要望を常に意識している。「誠意」と「技術」を信条とし、ご遺族様に心から寄り添い、真心の遺品整理や生前整理を日々行う。
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